「カナリヤは眠れない」、「茨姫はたたかう」
「心の病」というものに関して皆さまはどのようにお考えでしょうか? 当人の問題ですか?いや、それだけと考えるのは強引に過ぎるのではないでしょうか。 その本人がそこまで歪むようになった原因などというものは幾つもの要素が重なった結果なのですから、そういったことを考えずに「本人の責任」なんてふうに一括りで語ることなんてできません。 ここまで語って何を言いたいの?と思われるかもしれませんね。 ですが、今回紹介するのはそういう作品なのです。 それこそ「現代の若者たちが抱える心の病を鋭くも温かく描いたミステリー」(「カナリヤは眠れない」の著者紹介より)なのですから。 というわけで今回紹介する作品は大阪出身で新進気鋭のミステリィ作家、近藤史恵さんの作品「カナリヤは眠れない」と「茨姫はたたかう」のシリーズです。 では早速物語の紹介にと移りましょうか・・・。 この作品はミステリィの範疇に入る作品です。 ちょっと表現が曖昧ですが、それは話の途中までおよそミステリィと断言できる要素がないため。 この作品における探偵役を演じるのは変わり者の整体師、合田力(ごうだりき)です。 彼は「身体の声を聞く」能力に長けていて、背中を見ただけでその人の日常まで言い当てるだけでなく、その患者の現在抱えている問題などといったものまで見えてしまいます。 その接骨院にふとしたきっかけでマイナー週刊誌の編集者である小松崎雄大が通うことになる、物語はそうやって始まります。 話は結構淡々と進んでいき、謎が提起されるのは物語の大詰近くになってしまいます。 そのちょっとした感じの謎も探偵役の合田さん(なんか合田さんっっていうとジャイアンを思い出すな・笑)があっさりと解いてしまいます。 文庫の後ろにある作品の紹介に「異色のサイコ・ミステリー」とあるのは伊達じゃありません(笑) ちなみに話の中身を簡潔に要約すると、買い物依存症やストーカーへの被害に悩み怯える女性が合田さんの整骨院に通うことを一つの契機として自分の意思でその自体を見据えて対決し、克服していく、といったものになっています。 話の冒頭部分はその女性が自分や周囲にどういった問題があるのか、というのに無頓着な感じで少しつらいかもしれません。 しかしそういった過程を経たためだからこそ、問題と向き合えるようになった彼女たちの姿は何よりも美しく感じられます。 この作品は女性の方には是非とも見ていただきたい、と思います。 いや、これは最初にこの作品を宣伝していた方の受け売りそのままですけど(苦笑) 勿論男性にもとても面白く読むことができますので(念のため)。 「カナリヤは眠れない」と「茨姫はたたかう」、この二つの作品は祥伝社文庫より文庫書下ろしで発売されています。 シリーズ物なのであと何作出るかは分かりませんが、話は続いていくと思われます。 ただこの二作に続いて出るだろう作品も優しさと厳しさを併せ持った作品であるだろうことは容易に想像できますね。 「ねぇ。白馬に乗った王子様と、ストーカーってどう違うと思う?」 作中である人物が語った何気なくも鋭い言葉です。 あなたはこれについてどう思います?
(2001.04.22)
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