画像準備中       宮城谷昌光・著

講談社、講談社文庫








皆さまは歴史というものをどのように捉えておいででしょうか?
ただの過去としか感じないという方もいるでしょうし、それまでに過ごしてきた先人全ての息遣いをそこに感じると思われる方もいることでしょう。
ただし、どちらにしても確かに言える事が一つあります。
それはその時代を過ごしてきた人々は確かに存在していた、とされていることです。
そしてその中に人々が織り成してきた様々な物語が存在していることも確か。
歴史好きの人間はこういった物語を拾うことが根本的に好きな人間なのでしょうね。
というわけで今回紹介する作品は歴史小説です。
物語の名前は「花の歳月」
作者は宮城谷昌光という方で中国古代史の様々な舞台を題材にして数多くの美しい物語を織り成していらっしゃっている方です。

それでは作品の紹介に移りたいと思います。

歴史小説と先に言いましたが、この小説は高祖劉邦が開いた王朝である漢王朝(前漢)を舞台としています。
物語は高祖劉邦の息子で2代皇帝の恵帝の時代から始まります。
主人公は竇猗房(とういぼう)という名の、古くはあるが豊かではない家に生まれた娘です。
猗房は県で選ばれて皇帝の宮廷で仕えることになります。
猗房自身は当時の皇帝の母、呂太后の傍近くで仕えていたのですが、やがて恵帝と同じ高祖の息子で代王に封ぜられている劉恒のもとにおくられます。
そこで代王に寵愛された猗房は、代王が推戴されて皇帝となった際に皇后として立てられるのです。

以上がこの物語の大筋に当たります。
また物語はこれのみで終わらず、猗房の弟である広国にも話がいきます。
広国は幼い頃に拐されて奴隷となっていたのですが、姉が皇后となる直前に開放され、皇后となった姉と感動的な再会を果たします。
そして以後は外戚として朝廷より重んぜられることになったのです。

このような物語が描かれていますが、この話は実際にあった話として「史記」や「漢書」の列伝(漢書では外戚伝)に記載されています。
つまるところ上に書かれている粗筋はそのほとんどが史書にも記載されている事柄なのです。
ただし、作者である宮城谷さんはその上で本人独自の優しさと清冽さに満ちた文章でもってこの史実を再構築しています。
そして史実は清々しい物語として我々の前に姿を現します。
人物が清々しくあり、物語がまた清々しくある、「花の歳月」はそんな物語です。

この「花の歳月」は講談社より発売されています。
ハ−ドカバーで発売され、その後文庫化されています。
またその後にハードカバーで新装版が発売されてもいます。
ちなみに私が持っているのは最初のハードカバーの本です。
元々高校時代に図書館で読んで気に入ったのがこの作品との出逢いなのですが、当初は文庫化されたら買おうと思っていたのでした。
しかし、文庫版が実際に発売されて手に取ってみたところ、私はそれが気に入らなくて(文字の大きさなど)その足でハードカバーの方を買ってしまった、というどうでもよい顛末があったりします。
私は文庫とかハードカバーとかに拘るほうではないですけど、これだけはハードカバーで持っていたいと思っていますね。

歴史、特に中国史に興味のある方や清冽で美しい物語が好きな方はぜひぜひ手に取ってみて下さい。
「史記」に侍御左右、皆、地に伏して泣き、皇后の悲哀を助く、とまで表現された感動的な再会、そしてもう一つの再会に間違いなく心を打たれることでしょうから。

(2001.02.17)





BACK   TOP   NEXT